ひょんなことから海賊の元親さん(名前で呼んでいいと言われた)に四国に連れて来られたあたしは今。
「ザビザビザビザビザビー!」
「レッツザビーッ!!」
四国を攻めてきた連中を遠目に、言葉を失っていた。
………本当、なんだろうね。この世界。
愛よ勇気よ日輪よ
〜義の為愛の為、鬼をぶち倒すサンデー毛利〜
「帰ります。今すぐ帰ります。何故なら帰らなければならないからです」
「待て待て待て!」
くるりと踵を返そうとした刹那、元親さんは素早くあたしの両肩を掴んだ。
「ちょっ、あんな集団だなんて聞いてないよ!? 何あの黒服集団ッ!? ていうか離してちょうだい頼むから!」
「落ち着け! 気持ちは分かるが落ち着け!」
「落ち着けるかァァァッ! つーか気持ちが分かるなら私を本州に帰してあげてェェェッッ!!」
そんなあたしの魂の叫びはただただ虚しく響くばかりであった。
「ザビー教、ね…。また随分奇妙な宗教があったもんね」
ひとしきり争った後。仲裁に入った吉良 親貞さん(元親さんの弟さんらしい)が丁寧にあの集団のことを説明してくれて、あたしはそう口にした。ザビー教――多分、『あたしの常識』で考えたらキリスト教みたいなもんだろう。まあ、実際のキリスト教徒が見たら怒りそうだが。
「……って、待って。なんであの人達はあんな大勢で四国を攻めるの? 布教の為とか?」
「それもあんだろうが…恐らくヤツらは俺らの兵器が目当てだろうな」
「兵器?」
「そう。すべては愛の為!」
「何か出たーッ!?」
どっから現れたのか、緑色の鎧と同色の長い兜を身に付けた青年が輪刀(フラフープみたい感じの曲刀)を掲げて高らかに叫んだ。
えっ何この人。緑の妖精?
「毛利!? テメエ、どうしてここにいやがんだ!?」
「え、知り合い!?」
「フン、知れたことよ。我はザビー様の愛によって生まれ変わったのだ」
「ザビー様だぁっ!?」
緑の妖精の意味分からんカミングアウトに盛大なリアクションをかます元親さん。
「えーっと…どちら様?」
いまいち話の見えず、あたしはまず妖精…じゃない、緑の鎧の青年に声をかけた。すると青年は、あたしを一瞥して「フン」と鼻を鳴らし、
「我が名はサンデー毛利。日輪の申し子にして、ザビー様の愛の使者!」
うわ。関わりたくねえー。自分で「愛の使者」とか言ってるよ、この人。
サンデーとやらから1、2歩後退りするあたし。しかし彼はそれにも構わず、更に口を開く。
「さあ、貴様らもザビー様の愛を知るがよい!」
「知りたくないィィィッ!」
「チッ…こうなったらアレを出すしかねえか…! オイ野郎ども!」
『アニキィィィ!』
海賊達の雄叫びが響き渡った直後、振動が伝わってきた。地の揺れが大きくなるにつれ、腹に響く程の重低音がズシン…、ズシン…、と聞こえてくる。
そうして『それ』は姿を現した! 戦国時代にはおよそ不似合いな、無機質な機械の音をさせたそれは、一見して木馬のような姿だ。しかしそのサイズは半端ないもので、「マジ●ガーZ(18m)ぐらいあるんじゃね?」というぐらいの大きさだった。
「どうだ? こいつが俺らの兵器、『木騎』よ!」
「いや、まあ…なんというか……」
自慢げに逞しい胸を反らす元親さんと、あまりの大きさに言葉を失うあたし。「なんで戦国時代にこんなカラクリあるの!?」という野暮なツッコミもあったが、それ以上にあたしの時代にすらなさそうなこの代物に感嘆を覚えたのだ。まあ、確かにこれ程のものならば、狙われるのも分かるが。
しかし―――
「―――フン」
巨大な木馬を前にしても、サンデーは以前として余裕を崩さず、輪刀を構える。
「我らが何の策も講じずに四国へ来たと思っているのか? めでたいな、長曾我部」
ドオォォォンッッ!!
「!?」
前触れなく起きた爆音に、長曾我部軍に動揺が走る。その様を嘲笑うかのように、サンデーは静かに言葉を紡ぎだした。
「貴様がからくりを何処に配置しているか、既に調査済みよ。あとは我自らが貴様を引きつけ、本命から引き離すという訳だ」
「テメエッ…!」
「今頃別動隊が『滅騎』の元へ向かっておろう。後は貴様を叩くだけだ、長曽我部よ! ザビー様の愛の礎となれ!」
そう高らかに言い放つと同時に、サンデーは輪刀を二つに分離して元親さんへ斬りかかった。だがそれは寸前で受け流され、元親さんは自身の碇槍で、懐に入った彼を吹き飛ばした。
「くぅ……ッ!」
サンデーは不格好ながらも体勢を立て直し、再び二つの曲刀となった輪刀を構える。
二人の斬り合いが始まった。キィン、と小気味良い音が響く中を、あたしと木騎を操縦している人達は、ただ固唾を飲んで見守っていた。彼らの場合、下手に手出ししようものなら、元親さんに当たりかねない故だろうが、あたしは初めて目にする真剣勝負に、圧倒されていたのだ。
――そうして、どれぐらいの時が流れただろうか。
得物を交えていた二人は互いに後方に飛び、間合いを取る。どちらの息も荒くなっている。最早言葉は何の意味もなさない。どちらが倒れるか、それだけである。
先に行動を起こしたのは元親さんだ。対し、輪刀を構えて迎撃体勢に入るサンデー。
決着が今、つけられようとしていた――。
―続。―
漸く更新できましたー! 出来てこれかいィィィィ!そんなツッコミを受けそうです(ホントだよ)
今回はザビー教の虜になった毛利さんの登場です。しかし彼は書くのが難しい…。
でもタクティシャンになってイイ感じに壊れたサンデーさんが好きです。
ちなみに今回毛利さんは自分を囮にしてますが、あれは「サンデー毛利」だからこその行為だと思ってください。
「毛利元就」だとやらなそうな行為ですが。
次回の決着…どうしようか。
2007.10.11 柾希
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