今、私の目の前に幾千の星が、蒼く輝く地球が見える。
 そして隣には私の愛しい人がいる。

 明日は、とうとう最終決戦だ。

「いよいよ…だな」
「うん…」

 ヤンロンさんの呟きに、私は小さく言葉を返す。そしてまた、沈黙が続く。
 まぁ、元々この人はあれこれ喋る様な人じゃないんだけどね。そのくせ、やたら説教が長い。
 だけど、そんな彼を私は好きになったんだよね。

「…ヤンロンさん。最初に会った時の事覚えてる?」

 ふとそんな事を訊いてみると、ヤンロンさんは「ああ」と、ごく簡単に返事をした。

「…いきなりラ・ギアスに召喚されたかと思うと、戦闘に巻き込まれてさ」
「あの時、君は随分混乱していたな」
「まぁ…ね。あの時はホントいきなりだったし…」

 その当時を思い出し、苦笑する。ホント、突然だったもんなぁ…。
















『らぎあす…? 何それ、どういう事!?』
『この世界の名前だ。簡潔に言えば、ラ・ギアスは地球の内部に存在する異世界だ』

 かの有名なロンド=ベルに配属される事になり、移動を始めた矢先のこと、突然の出来事に混乱していた私に、彼はそう淡々と告げた。
 しかし私は話がついていけず、ますます混乱していた。

『異世界!? 何でっ!? 一体どうなってるの!?』
『落ち着かないか! 僕はホワン=ヤンロン。事情を説明するから、機体から降りてくれ』
















 確かあの後、同じようにラ・ギアスに召喚されたらしいリューネさんの話を聞いて、やっと納得したのよね。
 その後のことも思い出し始め、自然に笑いが溢れる。

「急に笑いだしてどうしたんだ、?」

 ヤンロンさんが私の顔を覗き込む様な形で尋ねてきたので、私はそれに寄り添う様に彼にくっついた。

「ううん、ホント懐かしいなぁ、って」

 もちろん楽しい事ばかりじゃなかったけれど、なんて小さく呟いたら、どうやら聞こえていたようで、そっと抱きしめられた。
 抱きしめられて、この人のぬくもりや鼓動が感じられる。それをもっと感じたい、と思うのは私のワガママなのかな。



 名を呼ばれ、顔を見上げる。

「明日も必ず生きよう。そしたら…その…」

 そこまで言って、口ごもるヤンロンさん。だから、私はこう言う。

「この戦いが終わったら、一緒にラ・ギアスに戻ろ!」
「ああ。必ず、な」

 そしてまた二人で星を見上げた。



 ふと、過去を振り返り、あなたと初めて会った時を思い出し。
 それらを忘れたくないから。このぬくもりを失いたくないから。

 だから、明日は絶対に生きのびてみせる。
 だから、この人を死なせないで、なんて星に願ってしまった。




―End―



以前携帯サイトにて受けたヤンロンリク夢です。私にしてはめずらしく大人しめなヒロインになりました。
そして初めて書いたシリアス風味。シリアスと言い切れないシリアスです。
ヤンロンも好きですが、魔装機神チームのキャラは皆好きです。
大人の事情は分かってても、OGにも出てほしいです…。


2007.07.29 柾希
(2005.12 制作)