「はぁ〜……」

 私は人知れず溜め息をつきながら、通路を歩いていた。
 ここ数日間、何とかの一つ覚えよろしく、敵がわんさか出てくること出てくること。せっかくの非番も潰れまくりだし。
 これじゃ、溜め息だってつきたくなるでしょう?







「ふぁ……眠い…」

 自分の部屋に戻る為、艦のエレベーターに乗ったの第一声がそれだった。
 今日の敵はネオ・ジオン。珍しく小隊長機がいなかっただけ楽だったが、それでも敵は少なくとも25機はいた。
 もっとも、は途中で数え飽きたので、本当の数は判らない。まぁ、とにかく多かったのだ。

 ―――はぁ……。

 と、今度は心の内で溜め息をつく

 しかし、こーも毎日毎日出撃してると、流石にやんなってくるし、敵の親玉全員にパンチをかましたくなるよ。
 ま、ンな事言っても仕方ないけど……。

 がそんな事を考えてる内に、目的の階に着き、エレベーターが開いた。彼女は半ばうとうとしながら出ようとすると、何かにぶつかり、だがそれでもは強引に進もうとした。

。何やってんだよ」
「ん?」

 上から聞き慣れた声が聞こえ、顔をあげると、マサキが目の前にいた。

「あー……壁かと思ったらマサキか。何でそこにつっ立ってんの?」
「エレベーター待ってたに決まってんだろうが。ていうかお前寝惚けてないか?」
「失礼な。ちゃんと起きてるよ。ただ少し睡魔に襲われてるだけだよ」
「それを寝惚けてるっつーんだろうがッ!!」
「それもそうか」

 とことんマイペースなの発言に、マサキは脱力した。
 のマイペースぶりは今に始まった事ではない。
 彼女に想いを寄せる人々の判りやすいアプローチすら、そのマイペースさで受け流していたのだった。無論、本人にその自覚はない。
 かくいうマサキもその一人なのだが、一向に気づいてもらえていなかったのだった。

「そういやマサキは何でここにいるの?」
「えっ……何でって……」
「だって、先刻格納庫で『食堂に行く』とかなんとか言ってたじゃん」
「聞いてたのか」
「また迷子になったの?」
「…う"………」

 の言葉にマサキは思わず気恥ずかしさのあまり、顔を引きつらせた。
 そんな彼にお構いなく、は不意にマサキの胸に飛び込んできた。

「!!? オ…オイ、!!」

 突然の事に驚きを隠せないマサキ。いくら気になる相手から抱きつかれたとはいえ、いきなりでは、思わず慌ててしまう。
 だが、呼びかけても返事は返らない。

「………?」

 再度呼びかけてみる。だが、聞こえてきたのは―――

「……すー……」
「寝た…のか?」

 マサキは、己に寄り掛かるの身体を支えるように抱きかかえる。
 考えてみれば、ここ最近、彼女はロクに休んでいた様には見えなかった。

「無理、してたんだな………ったく」

 口ではそう言うが、マサキのその表情は柔らい。そして、静かに眠るの額にそっと唇を落とす。



 今だけでも、愛しい人の寝顔を独占したいから。



 マサキはしばらくの間、その幸せを噛みしめていた。



―End―


携帯サイト時代に頂いた「マサキ甘甘夢。ヒロインは天然さん」という内容のキリリクでした………が。
………甘甘か? これ。(訊くなよ)
しかもヒロインは天然つーか、ただの寝ぼすけにしか思えないよ当時の私。
あ、ちなみにタイトルはこれまたガソダムフォースからです。

2004.12 制作
2007.12.20 修正