「ハマーン様…。このマシュマー、この薔薇に懸けて、今度こそアーガマを墜としてみせましょう…」

 こんにちは。ネオ・ジオン所属のです。
 (多分)それなりの実力を持つ同僚が、跪いてバラの花に祈りを捧げてるのを目撃した時、あたしはどうしたらいいでしょうか?

「マシュマー=セロ。何やってるのよ?」
「!? !?」

 しばらく考えた後、とりあえずツッコミを入れることにしたあたし。するとマシュマーはそれまであたしの存在に気付かなかったのか、盛大に驚いた。

「い…いつからそこに!?」
「アンタがバラに祈りを捧げて、ここにいないハマーン様に誓いを立ててた所から。」

 さも関心のなさそうに(実際に関心ないんだけど)あたしがサラリと言うと、彼は慌てた様子で素早く肩を掴んできた。

…っ! い…今見た事は忘れろ!! 今のは幻覚だ!!」
「いや。あんなの『忘れろ』言われても。ていうかインパクトありすぎて、忘れたくても忘れらんないし。特に子ひつ……」
「わーッ! わーっ! だから忘れろ!!」

 あたしの台詞を遮る様に、マシュマーは盛大なリアクションと共に力いっぱい叫んだ。







「しっかしアンタってホーント、ハマーン様命よねぇ…」

 言って、あたしは彼と向き合う様に座る。

「なっ…当然ではないか! ハマーン様こそ地球圏を治めるのにふさわしいお方! そのハマーン様にお仕えできるのだぞッ!」
「うん…まぁ……」
「そう! この薔薇の様に、気高く美しい……。あぁ、ハマーン様…ハマーン様ぁぁぁ!」
っやかましいわ、この天然騒音野郎ッ!!

スパァンッ!

 また何か暴走しそうなマシュマーの頭に、勢いよくスリッパを降ろした。
 ……ったく、これさえなきゃあ、まともに見えるんだけどなぁ〜…。
 あたしは頭を抱えつつ、眼前の同僚に向けて心底そう思う。そして、どこぞの艦長よろしく、胃腸薬常備のゴットンにほんのちょっとだけ同情したくなった。

「……ところで。私に何か用があったのではないか?」

 ツッコミの痛みがまだ晴れてないのか、マシュマーは頭を擦りながらそう訊いてきた。

「そうそう。すっかり忘れてたわ。こないだ、極東支部基地で、えと…ブロッケン? ってヤツと手を組んだでしょ? あの貴族っぽい男」
「…不本意だが、な。ハマーン様のご命令がなければ、あのような輩など…」
「その時の戦闘データやら記録やらを提出した後、宇宙に上がれ、だってさ」
「そうか…」

 言って、マシュマーは元々キチンと着ていた軍服を更に丹念に整えだした。

。エンドラの進路は?」
「ホンコン・シティよ。そこから打ち上げる」

 そう説明すると、彼は小さく頷いてからあたしに向き直る。

「すまないが、エンドラの者をすべて格納庫に集めてはもらえないか? あそこならクルー全員が集まるだろう」
「わかった……けど、なんでまた?」
「ここしばらく、休暇らしい休暇をとっていなかったからな。宇宙に上がる前に、この艦の騎士達に休息をとらせたいのだ」
「…そっか。じゃあ艦内放送ですぐ集合させるわ」

 あたしはくるりと方向転換をして、ブリッジへ駆け出そうとした。


 ────けれど。


「―――

 マシュマーがいつもより穏やかな声で呼び止める。

「まだ何か?」
「いや…いつもありがとう」
「…水臭いわね。士官学校時代からの仲でしょ?」

 あたしは軽く笑いながらそっけなく言って、その場を後にした。






 ────思い込みが激しくて、ハマーン様馬鹿で、どっか抜けてて。




 でも、そうやって、部下を思いやる心と真っ直ぐすぎる騎士道を持つマシュマー。


 そんなアンタと一緒にいられる関係は、あたしにとって、どんな物よりも心地良いものなんだ。


 恥ずかしくて、絶対に本人には言えないけどね。



―End―



携帯サイトにて、リクを戴いて書いたマシュマー。
ZZではジュドーが一番好きなのですが、マシュマーもお馬鹿ゆえの可愛さがありますv 見た目は美形なのにね(笑)
夢小説で初めて敵方の夢でもあり、我ながらお気に入りの作品です。(良し悪しはともかく)

2007.04.28 柾希
(2006.12.26 修正)