「ふっふふん、ふっふふん、ふんふふんふふんっ♪」

 それはとある休日の事、世界中にファンがいる、某有名ネズミのテーマソングを口ずさみながら、あたし―― は家路を急いでいた。
 傍から見れば、異常なほどのテンションであろうが、あたし自身の名誉のために言っておくけれど、別に春の陽気で頭がおかしくなった訳ではない。そもそも今は春でもないが。
 にも関わらず、あたしがこうしてはしゃぐ理由。それは今ハマってるスパロボシリーズの一つである、A(しかも攻略本付き!)を安くゲットできたのだ! 見つけた瞬間、思わず衝動買いというものをしちゃいましたよ、もぉ!
 つい先日クリアしたOG2で知った、アクセルとラミアちゃんが主人公なので、二人のファンになったからには、是非ともプレイしたかったのである。
 さぁ、早くウチに帰らなきゃ!




非日常な日々へ
〜現実は時としてありえないことが起こる〜




「と言う訳でたっだいまーっ!」

ガンッ!

「……ってぇ〜…」

 蹴破る勢いで玄関のドアを開けると、鈍い音と同時に呻きが聞こえた。

じゃん。これからどっか行くの?」
「何サラっと何事もなかったかのように言ってんだよ、!」

 玄関口を覗き込むと、講義の声を上げる(似てない)双子の兄であるは鼻の辺りを擦りながら、涙目で睨んでいる。あたしは右手を肩の高さまで上げて、

「あー…ぶつけて悪かったわ。ゴメンゴメン。……で、何処に行くの?」
「お前なぁ…ホントに悪いと思ってんのか? 棒読みで謝られても、誠意がひとっかけらも感じらんねえだけど」
「大丈夫。ちゃんと誠意は込めたから。ンな事より、あたしの質問に答えなよ」

 他人から見れば、随分ズレた会話に思えるだろうが、こんな会話はあたし達兄妹にとって日常茶飯事であり、も大抵はこれ以上何も言ってこない。
 今日もその例に洩れず、は溜め息をついた。どうやら諦めたらしい。

「ちょっと買い物だ。すぐ戻る。……は?」
「あたしはこれからスパロボ」
「……よくやるなぁ。いや、とにかく行ってくる」
「いってらっしゃい」

 言ってはゆっくりとした足取りで外に出ていった。
 さぁて、そんじゃあ早速Aをやろうっと!
 とりあえず玄関で背中を見送ってから自分の部屋に入り、あたしはGBAにスパロボAをセットし、攻略本片手にゲームを始めた。
 タイトル画面になり、主人公選択の画面に移る。主人公は少し悩んで、アクセルを選択。OG2じゃあずっと敵だったしね。
 それから、機体の選択画面。どうやらAは、機体がリアル系が二つ、スーパー系が三つあるようだ。

 リアル系は、アシュセイヴァーとラーズアングリフ。
 アシュセイヴァーは、OG2でレモンが乗っていた機体。性能的にはMS(モビルスーツ)と似たりよったりで、中・長距離間の攻撃が得意……らしい。
 ラーズアングリフは、見た目は古臭いけど、なかなかの運動性+防御装置で、砲撃戦なら敵ナシって感じ。その分、接近戦はダメらしい。
 ……つかラーズって、OG2でユウが乗ってたヤツじゃん。そっか。Aの主人公機だったんだ。

 お次はスーパー系。アンジュルグ、ソウルゲイン、ヴァイサーガの三機。
 アンジュルグは、OG2でラミアが乗ってたスーパーロボット。天使のような翼と女性的なフォルムが印象的で、遠距離からの攻撃が得意な機体。
 ソウルゲインはアクセルが乗ってた機体で、攻撃力は五機の中でもトップクラス。しかもHP回復があるから、前線でガンガン使う事ができる。ただ、射程の短さが難点みたいだ。
 ヴァイサーガ……コレはOG2で隠し機体になってて、あたしはまだゲットしていないヤツだ。
 スーパー系にしては運動性が高くて分身持ち(これはアンジュルグにも言えるけど)。装甲は他のスーパー系2機に比べるとやや低めだが、その代わりにシールド防御ができる。なるほどねぇ。

「うーん、やっぱアクセルと言ったら、ソウルゲインかな」

 それに、遠くから攻撃するより、敵に近づいてガンガンいくスーパー系の方が好きだし! そんな訳で、機体はソウルゲインを選び、いざゲームスタート!!

「………あれ?」

 勢いよくボタンを押したまではよかったが、そのまま画面がブラックアウトしたまま動かなくなってしまったのだ。

「あれ? ひょっとしてバグった?」

 とりあえずAボタンを連打してみるけれど、何の変化もありゃしない。……壊れた? そうだとしたらゲームができない。かと言って、修理できやしない。
 うーん…しゃあない。ひとまず牛乳飲んでから考えよう。
 大体十分ぐらい経ってから、あたしは一旦気分を転換するために牛乳を取りに台所へ向かった。
 我ながらこの切り替えの早さは良い所だよなぁ、と思いつつ階段を降りようとした刹那―――

「はれっ?」

 恐らく擬音語を付けるならば、『ツルッ』となるだろう。あたしは階段を踏み外したのだ。

これじゃあ、昔のマンガだろあたしぃぃぃぃぃぃッ!!

 気絶する寸前の最後の言葉は、近所迷惑を顧みないその自分ツッコミだったであった……。














 ―――あたしは、深い深い闇の中にいた。


 それは苦しいモノではなく、むしろ心地良い―――例えるならば、寒い日の布団の中のように、ずっといたいとさえ思うものだった。
 なんだか遠くから爆音が聞こえるけど、なんかもう、ずっと寝ていたい………って、待てよ?
 ……………『爆音』?

「って、寝てる場合じゃないいぃぃぃぃぃぃぃッ! 死んでしまうわぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」

 ものすごい勢いで目が覚め、あたしは即座に立ち上がりながら叫んだ。
 ……ってあら? ここは……?
 周囲を見回すと、そこはあたしの家にはない空間だった。しかも、あたしは何故かちゃんと靴を履いている。

「…ッ! ……あ、そういや、先刻階段から落ちたんだっけ……」

 あれ? 痛みがあるって事は、これは夢じゃないって事? 一体これはどういうこ……

ゴオオォォォォンッ!!

「っひゃあぁっ!?」

 少し…いや、かなり混乱してる頭で考えてる中、突如激しい轟音と共に、大きな震動がこの場所を襲った。
 い…今はそんな事考えてる場合じゃないって訳ね…。と、とにかく、ここから逃げなきゃっ!
 今現在何が起こってるか全く分からなかったが、とにもかくもあたしは何処かへ避難することにした。出口が何処にあるかなんて知るはずもない。けれど、このままここで死ぬなんてまっぴらだ。
 …ったく、一体これはどうなってんのよぉぉぉっ!




→To be continue……




Aは管理人がOG2クリア後にプレイした作品でしたが、思った以上にアクセル好きになってしまったものです(笑)
ドラグナーのキャラも皆イイ感じだったり、個人的にツボだったのでトリップを書き始めてました。
……やっぱ今更ですかね? けど、最後まで書ききれるように頑張りますぞ!

2007.03.06 柾希