こんにちは。青春学園中等部3年の男子テニス部マネージャーです。明らかに年齢偽ってる部長を筆頭に、めちゃくちゃ濃い集団の中で頑張ってる普通の女子中学生です。

 ……え? なんでテニス部マネージャーをやってるのかって?
 うん。それには海より深ーい訳があるのですよ。
 そう…あれは、今年4月のことだった……。







 新学年に上がってから、ある程度クラスメイトと馴染んできたある日。あたしは何かに没頭しているらしい不二君になんとなく話しかけてみた。
 …今にして思えば、それが間違いの始まりだった。

「不二君。何してるの?」
さん。丁度よかった。この中から好きなクジを選んでくれない?」
「クジって…このあみだクジ?」

 不二君に見せられたあみだクジは、おおよそ2,30本はあるんじゃないかってなぐらいのものだった。
 それから適当にひとつ選んで、指で線をなぞっていくと、辿り着いた先は『おめでとう』とだけ書かれた当たりクジ(?)だった。

「おめでとう、さん」
「え、あ、いや、どうも」

 何がおめでとうなのか、そもそも何のクジなのだろうか、と困惑しつつも返事をすると、不二君は菊丸君を呼んだ。
 ちなみに二人は我が3−6が誇るテニス部のレギュラーだったりする。そんでルックスがいいもんだから、女子には人気が高いのだ。不二君はいつも穏やかな微笑みをしてるけど、妙にミステリアスな雰囲気がある所が素敵で、菊丸君は元気いっぱいで可愛らしい所が魅力的(青学校内新聞部調べ)らしい。ま、あたしには関係ないんだけど…

「英二。さんがテニス部のマネージャーに決まったよ」

 そうそう。だってあたしはテニス部のー…って、ゥオイィィィィッ!!!

「ちょっ、待て! 何言ってんの!? 何言ってんのォォォッ!!?」
「そっかー。、これからよろしくな!」
「あ、よろしく……じゃなくて!」

 あ…危ねえ…! 菊丸君の無邪気スマイルに流されそうになった!
 我に返り、ノリツッコミをしたあたしは、すぐに不二君に詰め寄った。

「不二君!? 何とぼけたこと抜かしてんの!? しかも確定かよ! 大体なんで3年の春っちゅう今の時期な訳!? 入ってすぐ引退って、めっちゃ意味ないじゃん!」
「聞きたい?」
「ああ聞きたいね! 納得いく理由をね!」

 と、いきり立つあたしとは裏腹に、不二君は女子卒倒の微笑みを絶やさぬまま、先程のあみだクジをあたしの目の前に持ってきた。

「実は37個のクジから一発で当たりを引く子をマネージャーにするといいって、今日の占いで言われたんだ」
いやいやいやいや無いよソレは! 何その超運任せ的な理由っ!?」

 ていうかそんなら1年か2年の教室行ってやれよ! ともっともなツッコミを入れるあたし。しかし不二君はそんなの何処吹く風と言った様子で、

「いや、『同じクラスなら尚良し!』ってあったからね」
「ピンポイント過ぎるなオイ! つーか何その占い!?」
「ボクの姉さんの占いだよ。よく当たるんだ」
「そうそう。不二の姉ちゃんって、雑誌にも載るくらいすっごいんだぜ。不二由美子って言うんだけどさ」
「不二由美子…?」

 菊丸君の言葉に、あたしは記憶を手繰り寄せる。
 その人って、確か巷で人気の占い師だっけ。友達もめっちゃ言ってたな。そっか、それなら仕方ないか……

って言う訳あるかぁぁぁぁぁッ!! 占いで決まろーがあみだクジで決まろーがンな面倒くさい物、あたしはやらんッ!!」

 と、ノリツッコミ風に、あたしはそう力の限り叫んだ。ここまでハッキリ言えば大丈夫だろう。そう踏んだ。
 しかし、そんなあたしの企みは、あっさり打ち砕かれる事となる。

「そんなぁ…。せっかく新しい仲間が増えると思ったのにニャ…」
「仕方ないよ、英二…。彼女にも都合があるんだから…」
「う〜…それは分かってるけどさぁ…」

 え…何この空気。なんでそんなに哀愁漂わせてんの。しかもさり気にもの哀しそうな瞳で見つめてるし…!何、あたしが悪いの? 悪いのか?
 まさかの哀愁プレッシャー攻撃に、思わずたじろいてしまうあたし。
 更に。

。二人がああ言ってんだから、マネージャーになってやれよ」
さん、君なら出来るって!」
ちゃん。ガンバ、ガンバ!」
「大丈夫よ。はやれば出来る子なんだから」

 何故か友人達を筆頭に、3−6のクラスメイトが一丸となって、『コール』を始めやがったのだ!
 いやいやいやおかしいよねコレね。どう考えても心一つにする場面じゃないよね今ね。大体なんであたしなんだよ!
 そう心の底からツッコミをしたくとも、こんな四面楚歌な状況で己を貫ける程、あたしは強くなれなかった。

 そして。

……テニス部マネージャーをやらせていただきます……!」

 3−6の皆に囲まれた状態で、あたしは泣く泣くテニス部の入部宣言をしたのだった…。









 そんなこんなでマネージャーになってから1ヶ月。何だかんだ言いながら、今の状況に慣れちゃうんだから、人間の順応力ってものは馬鹿にできない。ああ、そういえば、入部初日の手塚の顔は面白かったな。1年の時からずっと鉄面皮だと思ってたら、意外と驚いてたし。
 などと振り返り、あたしは一人口の端を上げた。

。このドリンクを飲んでみないか?」
「あっ。サンキュ、乾」
センパイ! それっ……!」

 部員達の理由不明な制止も構わず、乾から手渡されたドリンクを躊躇いなく飲んだ瞬間。


「にゅあああああああッッ!!!」


 気づいたら、あたしは猛ダッシュでテニスコートを抜け出していた。
 ああ。やっぱマネージャーなんてなるんじゃなかった、と後悔しながら。あと、気絶する瞬間、目覚めたら絶対に乾はぶん殴ると堅く心に誓うあたしだった。

―End―



個人的に、テニプリ夢では振り回され平凡主人公の日常ギャグ(やや友情寄り)が大好きです。そんな管理人が書くもんなので、いちゃラブ要素は多分少ないです。
ちなみに不二はグレーゾーンな黒さでお願いします(誰に)

2008.04.29 柾希